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zoom RSS 六義園の浮宝石

<<   作成日時 : 2017/06/27 22:28   >>

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21 浮宝石 (ふはうせき)
素盞嗚命(すさのをのみこと)、眉の御毛をぬきて、浮宝(うくたから)となし給う事、『やまとふみ』に見えたり。
舟の形に似たれば、石にてもうかぶにや、とおもはれて。

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浮宝石 (21 ふはうせき)は六義園八十八境の一つ。船に似た形の石なので、石ではあっても、もしかしたら水に浮かぶかも知れないと思われて命名したと、いう意味(資料1)。「やまとふみ=日本書紀」の記述にある神話から採られた境です。
日本神話と呼ばれる伝承はほとんどが、『古事記』、『日本書紀』および各『風土記』の記述によります。近世になると、江戸時代の国学者・文献学者・医師であった本居宣長(もとおり のりなが、1730〜1801年)が古事記の本格的解明を目指し『古事記伝』(こじきでん、ふることふみのつたえ)を著し、日本神話といえば『日本書紀』の内容が主に伝わっていたのが一変し、『古事記』の内容が主で伝えられるようになりました。ちなみに、吉保の『六義園記』は1702年の記述ですが、『古事記伝』は1764年に起稿し1798年に脱稿した注釈書で『記伝』と略されます。
元禄の時代、神話は『やまとふみ』が主だったとして話を進めますが、素盞嗚命は伊弉諾尊と伊弉冉尊の間に産まれた神です。素盞嗚が髭を抜いたら杉の木になり、眉の毛を抜いたら楠の木となったので、彼はその杉と楠で、「浮宝(うくたから)=舟」を作るように言った、という話が載っています。
さてその「浮宝石」ですが船には見えません。絵図では舟らしいのですが。左後ろの石の方がよっぽど舟らしく見えます。      

画像
写真:中の島の「浮宝石」 2014/07/08

◇古今集仮名序 ― 歌の始発、和歌の始発
この歌、天地(あめつち)の開きはじまりける時より、いで来にけり。然(しか)あれども、世に伝はることは、久方の天(あめ)にしては下照姫に始まり、あらがねの地(つち)にしては、すさのをの命(みこと)よりぞおこりける。ちはやぶる神世には、歌の文字も定まらず、すなほにして、言(こと)の心わきがたかりけらし。人の世となりて、すさのをの命よりぞ、三十文字(みそもじ)あまり一(ひと)文字はよみける。

や雲立つ出雲八重垣妻ごめに八重垣作るその八重垣を

◇【通釈】雲が何重にも立ちのぼる――雲が湧き出るという名の出雲の国に、八重垣を巡らすように、雲が立ちのぼる。妻を籠らすために、俺は宮殿に何重もの垣を作ったけど、ちょうどその八重垣を巡らしたようになあ。(須佐之男命 千人万首より)

上記は、『古今集』仮名序(資料2)の記述です。訳は千人万首より。 歌の発生は、イザナギ・イザナミ二神が夫婦の神となられた時の唱和の事(→古事記上巻)に求め、和歌の始発は、人の世となってすさのをの命の歌としています。『古今集』仮名序で、人間界で詠まれた最初の和歌とされていることから、「八雲の道」は和歌の道を意味するようになりました。詳しくは、『和歌文学の基礎知識』(資料3)に目を通してください。

◇八雲の光・・「和歌の道のすばらしさ」
跡を口の碑に留むとも、もし八雲の光編(あまね)き護(まほ)りにあらざらましかば、いかでか山川(やまかは)と共に、長くひさしかるべき。
上記は、『六義園記』序文の記述です。本文を正しく深く読むために『六義園記注解』(資料1)をお勧めします。以下はその抜粋です。
人が「人」たりうるためには、「和歌の力」によらなければ、人間という存在は永遠の物とはなりえない。名を後世に残すのは、名歌を詠んだ人だけである。また名歌に詠まれた名所だけである。ゆえに、柳沢吉保は、徳川五代将軍・綱吉によって与えられた無常の栄誉を「和歌の力」によって後世まで残したいと切望したのです。そして、北村季吟から受けた「古今伝授」を精神的支柱として六義園を造営しました。
皮肉なことに、「犬公方」の名を残した綱吉、「佞臣」と言われた柳沢吉保の名は、「口の碑」によって現代まで語り伝えられましたが、吉保の真実の心は『六義園記』が伝えています。

二十一世紀の現代になり、綱吉の「生類憐れみの令」は再評価され、吉保の「口の碑」にも真実の光が当てられるようになりました。『六義園記注解』と合わせて、『松陰日記』(資料4)、『柳沢吉保と江戸の夢』(資料5)に是非目を通していただくことをお願いして、この境の説明は終わりといたします。

資料
1.『六義園記注解』島内景二著 (有)甲文堂 発行2009年2月17日 p68、p9-11
2.『古今和歌集』佐伯梅友校注 岩波書店 発行2001年 第4刷 p10
3. 『和歌文学の基礎知識』谷知子 角川選書 平成28年5版 p18
4.『柳沢吉保側室の日記―松蔭日記』正親町町子作 増淵勝一訳 国研出版 1999年発行
5.『柳沢吉保と江戸の夢』 島内 景二 笠間書院

掲載日:2017年(平成29)6月27日(火)晴

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